## デュマの王妃マルゴと人間
王妃マルゴの人間性
アレクサンドル・デュマ・ペールの小説「王妃マルゴ」は、16世紀後半のフランスを舞台に、宗教対立と王家内の権力闘争に翻弄される人々の姿を描いています。その中心となるのが、タイトルにもなっているマルグリット・ド・ヴァロア、通称王妃マルゴです。
小説の中で、マルゴは類まれな美貌と知性、そして強い意志と行動力を持ち合わせた女性として描かれています。彼女は、自身の魅力を駆使して周囲の人々を操り、自身の目的を達成しようとします。また、情熱的で愛情深く、愛する人のためにはどんな危険も顧みない一面も持ち合わせています。
一方、マルゴは冷酷で計算高い一面も持ち合わせています。自身の目的のためには手段を選ばず、時には残酷な行為に手を染めることもあります。権謀術数が渦巻く宮廷で生き抜くためには、そのような一面も必要だったのかもしれません。
人間関係
小説は、マルゴと周囲の人々との複雑な人間関係を通して、人間の愛憎や欲望、野心を描き出しています。
マルゴと最も重要な関係を築くのが、彼女の夫であるアンリ・ド・ナヴァール(後のアンリ4世)です。政略結婚という形で結ばれた二人ですが、互いに惹かれ合い、深い愛情で結ばれていきます。しかし、宗教対立や王家内の権力闘争に翻弄され、二人の関係は幾度と渡る危機に直面します。
また、マルゴは、カトリック教の狂信的な指導者である兄のアンリ3世や、冷酷な母親のカトリーヌ・ド・メディシスとの間で、愛憎入り混じった複雑な関係を築いています。
歴史とフィクション
デュマの「王妃マルゴ」は史実を基にしていますが、フィクションとしての脚色が加えられている点に留意する必要があります。特に、登場人物の性格や人間関係、そしていくつかの事件については、デュマの創作による部分が多く含まれています。
例えば、マルゴとアンリ・ド・ナヴァールの恋愛関係は、史実では確認されていません。また、マルゴは小説では非常に情熱的で行動的な女性として描かれていますが、実際のマルゴはもっと穏やかで思慮深い性格だったと言われています。
「王妃マルゴ」は、あくまでも歴史小説であり、歴史的事実を正確に描写したものではありません。しかし、デュマの筆致によって、当時のフランス社会の雰囲気や人々の生き様が生々しく描かれており、歴史的事実を超えた魅力を持つ作品と言えるでしょう。