デュマの二十年後が扱う社会問題
フランス社会の不安定さ
「二十年後」は、フロンドの乱と呼ばれる時代、フランスが内戦状態にあった時代を舞台としています。貴族たちが権力を握ろうと若きルイ14世に反旗を翻し、国は混乱と不安定さに陥っていました。デュマはこの社会状況を背景に、ダルタニャン、アトス、ポルトス、アラミスという四銃士たちの運命を描写しています。彼らはかつては国王のために剣を振るった忠実な騎士でしたが、20年の時を経て、それぞれの正義と信念に従って異なる道を歩むことになります。
この時代のフランスは、絶対王政の矛盾が露呈し、社会構造が大きく揺らいでいました。民衆は重税と貧困に苦しみ、貴族たちは権力闘争に明け暮れていました。デュマはこのような社会不安の中で、登場人物たちがそれぞれの立場や信念に基づいて行動する様子を描くことで、当時のフランス社会が抱えていた問題を浮き彫りにしています。
政治と道徳の葛藤
物語の中で、ダルタニャンは国王への忠誠を貫き、反乱軍と戦いますが、かつての仲間たちはそれぞれの立場から彼と対峙します。アトスは、貴族としての誇りから反乱軍に身を投じます。ポルトスは、現実的な利益を優先して行動し、アラミスは、宗教的な理想と現実政治との間で葛藤します。
このように登場人物たちは、政治的な思惑や個人的な信条によって、異なる立場を選択します。これは、当時のフランス社会における道徳観の混乱を反映しています。絶対的な価値観が失われつつある中で、人々はそれぞれの正義に基づいて行動し、それが対立を生み出す原因となっていました。デュマは、登場人物たちの選択を通して、政治と道徳の葛藤という普遍的なテーマを描き出しています。
友情と時代の変化
「三銃士」では揺るぎない友情で結ばれていた四銃士でしたが、「二十年後」では、時代の変化とともに彼らの関係も変化していきます。かつては共に命を賭して戦った彼らでしたが、異なる立場や信念を持つようになり、友情は次第に薄れていきます。
これは、個人の成長や時代の流れが、いかに人間関係に影響を与えるかを示しています。青春時代には共通の目標に向かって突き進むことができたとしても、年齢を重ね、社会経験を積むにつれて、それぞれの価値観や人生観は変化していくものです。デュマは、四銃士たちの友情の変化を通して、時間の経過とともに変化していく人間関係の脆さと、それでもなお残る友情の尊さを描き出しています。