## デュマのモンテ・クリスト伯が扱う社会問題
復讐と正義
モンテ・クリスト伯の物語の中心となるのは、もちろん復讐です。主人公エドモン・ダンテスは、無実の罪で投獄され、青春を奪われます。彼は獄中で出会ったファリア司祭からあらゆる知識を授けられ、脱獄に成功すると、モンテ・クリスト伯爵と名を変え、自分を陥れた者たちに復讐を開始します。
この復讐劇を通して、デュマは「正義とは何か」「復讐は許されるのか」という根源的な問いを投げかけます。ダンテスの復讐は、読者にとって痛快な面もあれば、やり過ぎと感じる面もあるでしょう。彼の行動を通して、読者は善悪の境界線や、正義のあり方について深く考えさせられます。
社会における階級と不平等
当時のフランスは、ナポレオン失脚後の王政復古という激動の時代でした。貴族社会が復活し、平民との間には厳然たる壁が存在していました。ダンテスもまた、身分の上昇を企んだことで、貴族たちの嫉妬を買い、陥れられることになります。
デュマは、作中で当時の社会に蔓延する格差や不平等を鋭く描いています。ダンテスが伯爵という高貴な身分を得て復讐を果たしていく過程は、当時の社会構造に対する痛烈な風刺となっています。読者は、ダンテスを通して、社会における階級の不条理や、そこから生まれる人間の醜さを目の当たりにすることになります。
人間の善と悪の二面性
モンテ・クリスト伯には、善人と悪人が明確に区別されているわけではありません。ダンテスを陥れる者たちにも、それぞれの事情や野心があり、一概に悪と断罪することはできません。逆に、ダンテス自身も、復讐に執着していく中で、冷酷な一面を見せるようになります。
デュマは、人間の中にある善と悪の二面性を浮き彫りにし、善悪の境界線の曖昧さを問いかけます。読者は、登場人物たちの心の葛藤や変化を通して、人間の本質について考えさせられることになります。