## デュマのモンテ・クリスト伯から学ぶ時代性
復讐劇に映る19世紀フランスの光と影
アレクサンドル・デュマの傑作『モンテ・クリスト伯』は、冤罪により投獄された男、エドモン・ダンテスが、脱獄後、モンテ・クリスト伯爵と名を変え、自分を陥れた者たちに壮絶な復讐を遂げる物語です。出版当時から熱狂的に支持され、映画やドラマなど様々な形で現代に受け継がれています。その魅力は、スリリングな展開や魅力的な登場人物はもちろんのこと、19世紀フランスの社会背景や人々の価値観を色濃く反映している点にもあります。
物語の舞台となるのは、ナポレオン失脚後のフランス。王政復古、七月革命、二月革命といった政治的動乱が続き、社会は混乱と不安に包まれていました。人々は立身出世や富への欲望を募らせ、その裏では陰謀や裏切りが横行していました。ダンテスもまた、無実の罪を着せられ、愛する者や未来を奪われることになります。これは当時の社会における不条理や不正を象徴する出来事と言えるでしょう。
ダンテスの復讐は、単なる個人的な恨みを晴らす行為ではなく、腐敗した社会への痛烈な批判として描かれています。彼は、権力や財力を駆使し、巧妙な策略を巡らせて、敵を追い詰めていきます。その過程で、当時の貴族社会の退廃や道徳の崩壊、司法制度の不備などが浮き彫りになっていきます。読者は、復讐劇のスリルを味わいながら、当時の社会が抱えていた問題点や矛盾を突きつけられることになります。