デフォーのロビンソン・クルーソーを面白く読む方法
時代背景に思いを馳せる
『ロビンソン・クルーソー』が書かれたのは18世紀初頭。大航海時代が終焉を迎え、ヨーロッパ諸国が世界中に植民地を広げ、資本主義が台頭し始めた時代です。主人公クルーソーも、そんな時代を象徴する冒険商人でした。彼の旅は、当時のヨーロッパ人が未知の世界へ抱く好奇心と欲望、そしてキリスト教的価値観と未開の地に対する偏見を映し出す鏡でもありました。
当時の社会状況や価値観を理解することで、クルーソーの行動や思考、そして作者デフォーが作品に込めたメッセージを読み解くことができます。例えば、クルーソーが漂着した島で、絶対的な支配者として君臨する姿は、当時のヨーロッパ人が植民地に対して抱いていた優越意識を象徴していると言えるでしょう。
無人島生活のリアリティを楽しむ
無人島に漂着したクルーソーは、衣服も食料も住処もない、まさにゼロからの状態から生活を立て直さなければなりません。小説では、彼が知恵と工夫を凝らし、道具を作り、食料を確保し、住居を築いていく様子が克明に描かれています。
現代の私たちから見ると、原始的な生活に見えるかもしれません。しかし、火を起こすこと一つとっても、容易ではありません。彼の創意工夫と努力は、人間の逞しさ、そして自然と対峙し、生き抜くことの厳しさを実感させてくれるでしょう。
現代社会では得難い、サバイバル生活を追体験することで、物語は単なる冒険譚を超え、人生の教訓を与えてくれる書へと変貌します。日々の暮らしの便利さを再認識するとともに、創意工夫の大切さを改めて感じることができるでしょう。
クルーソーの心理描写に注目する
無人島での孤独な生活は、クルーソーの精神状態にも大きな影響を与えます。彼は絶望に打ちひしがれることもあれば、希望を見出して生き抜こうとすることもあります。
デフォーは、彼の葛藤や成長を繊細な筆致で描写しています。孤独の中で信仰に救いを求めたり、先住民フライデーとの出会いを経て人間関係を再構築していく姿は、人間の心の奥底にある孤独と希望、そして他者との繋がりに対する欲求を浮き彫りにします。
彼の心の変化を追うことで、私たちは人間の心の複雑さを理解し、共感することができます。それは、現代社会においても重要なテーマである、孤独や孤立、そして他者とのコミュニケーションの大切さを改めて認識させてくれるでしょう。