## デフォーのロビンソン・クルーソーの技法
一人称視点によるリアリティの追求
デフォーは、ロビンソン・クルーソーの一人称視点を使用することで、物語に強いリアリティを与えています。クルーソー自身の言葉で語られることで、読者は彼の思考や感情、そして過酷な環境における日々の奮闘をより身近に感じ取ることができます。詳細な日記風の記述や率直な自己内省は、あたかも読者がクルーソーの体験を追体験しているかのような錯覚を覚えさせます。
平易な文体と詳細な描写
デフォーは、複雑な比喩や難解な語彙を避け、平易で簡潔な文体を用いています。これは、当時の一般的な読者層である中産階級の人々に受け入れられやすいようにという意図があったと考えられています。一方で、彼は島の自然やクルーソーの生活、工作の様子などを事細かに描写することに多くの時間を割いています。この詳細な描写は、読者の想像力を刺激し、物語の世界に深く没入させる効果を生み出しています。
宗教と道徳の要素
「ロビンソン・クルーソー」は、単なる冒険物語ではなく、宗教と道徳が重要なテーマとして織り込まれています。クルーソーは、当初は神の意志に反して航海に出たことを悔やみ、絶望の淵に立たされます。しかし、彼は聖書を読み解き、祈りを捧げることを通して、次第に信仰心を深めていきます。そして、神の導きと自身の努力によって、過酷な環境を生き抜く術を身につけていくのです。
植民地主義と文明批判
無人島に漂着したクルーソーは、自らの力で文明を築き上げていきます。これは、当時のヨーロッパ社会における、理性と努力によって自然を征服し、文明を築き上げることができるという啓蒙主義的な思想を反映しています。しかし、一方で、クルーソーが「フライデー」と名付けた先住民を「野蛮人」とみなし、自らの僕として支配する様子は、当時のヨーロッパ社会における植民地主義や人種差別的な視点を露呈しているとも言えます。