## デフォーのロビンソン・クルーソーと人間
ロビンソン・クルーソーにおける人間の姿
ダニエル・デフォーの小説「ロビンソン・クルーソー」は、1719年の出版以来、人間の文明と自然、そして人間の心の奥底を探求する作品として、多くの読者を魅了してきました。漂流という極限状態に置かれた主人公ロビンソン・クルーソーを通して、人間の持つ様々な側面が浮き彫りになります。
自己依存と社会性
無人島に漂着したクルーソーは、文明社会から切り離され、自らの力で生き抜くことを余儀なくされます。彼は持ち前の器用さと、難破船から運び出した物資を駆使し、住居を築き、食料を確保し、自給自足の生活を確立していきます。この過程は、人間が本来持つ自己依存能力の高さを示すとともに、文明社会において忘れられがちな、自然と対峙する力強さを浮き彫りにします。
一方で、クルーソーは孤独に苦しみ、社会とのつながりを切望します。彼は救助されることを願い、日記をつけ、言葉を話す相手を求めます。やがて漂着した「フライデー」を「野蛮人」から「文明人」へと教え導こうとする姿は、人間が社会的な生き物であり、他者との関わりの中で自己を確立していく存在であることを示唆しています。
理性と信仰心
クルーソーは、合理的な思考と信仰心の双方を併せ持つ人物として描かれます。彼は、困難に直面するたびに冷静に状況を分析し、解決策を見出そうとします。彼の持ち物は、合理的な思考に基づき、必要なものとそうでないものを選別した結果であり、彼のサバイバルは、理性的な判断の積み重ねによって成り立っています。
しかし同時に、クルーソーは敬虔なクリスチャンとして、神の導きを信じ、祈りを捧げ、聖書から生きる希望を見出します。絶望的な状況においても信仰心を失わない姿は、人間の精神的な強さを象徴しています。