デフォーのロビンソン・クルーソーが扱う社会問題
植民地主義
『ロビンソン・クルーソー』は、植民地主義を正当化する、あるいは少なくとも問題視しないイデオロギー的枠組みの中で書かれたことは否定できません。クルーソーは、まさに植民地主義者の典型であり、世界を資源と労働力を搾取すべき場所と見なしています。彼は難破した島を当然のように所有し、「王様」を自称し、原住民のフライデーを支配下に置きます。
小説は、クルーソーの視点から物語が語られるため、彼の植民地主義的行為を批判的に吟味することはありません。むしろ、クルーソーの成功と支配を称賛する傾向があり、当時のヨーロッパ社会に蔓延していた植民地主義的思考を反映しています。
宗教と道徳
無人島での孤独な生活を通して、クルーソーは自らの宗教観や道徳観と向き合います。彼は絶望の中で聖書に救いを求め、神の摂理を理解しようと苦悩します。クルーソーの宗教体験は、当時のピューリタニズムの影響を色濃く反映しています。
一方、クルーソーの道徳観は、彼の植民地主義的行動と矛盾する側面も持ち合わせています。彼は奴隷制を当然とみなし、フライデーを支配下に置くことを正当化します。この矛盾は、当時のヨーロッパ社会における宗教と道徳の複雑な関係を浮き彫りにしています。
社会契約と個人の自由
文明社会から隔絶された無人島での生活は、社会契約や個人の自由といった問題をクルーソーに突きつけます。彼は自給自足の生活を通して、社会のルールや慣習から解放されますが、同時に孤独や不安にも苛まれます。
クルーソーはフライデーとの出会いを経て、人間関係の重要性を再認識し、社会の一員としての自分自身を見つめ直します。この経験は、社会と個人の複雑な関係、そして人間の本質についての考察を深める契機となっています。