## デフォーのモール・フランダースの原点
モールの性格形成における社会の影響
ダニエル・デフォーの小説「モ ル・フランダース」は、17世紀のイギリス社会を背景に、主人公モール・フランダースが貧困から逃れるため、窃盗や売春など様々な手段で生き抜いていく物語です。モールの数奇な運命は、当時の社会構造や道徳観と密接に関係しています。
まず、当時のイギリス社会は階級社会であり、貧困層は過酷な生活を強いられていました。モールも孤児として生まれ、幼い頃から貧困に苦しみます。当時の救貧院の劣悪な環境や、裕福な階級の人々の冷淡な態度は、モールの倫理観に大きな影響を与えます。
また、女性は経済的に男性に依存せざるを得ない状況にあり、結婚は経済的な安定を得るための手段と見なされていました。モールも様々な男性と関係を持ちますが、それは彼女が経済的な自立を目指し、社会で生き抜くための手段でもありました。
当時の文学における「悪漢小説」の影響
「モール・フランダース」は、ピカレスク小説の要素を取り入れた「悪漢小説」と呼ばれるジャンルの影響を受けています。悪漢小説は、悪漢である主人公が、社会の裏側を舞台に、様々な経験を通してたくましく生き抜いていく様を描いた物語です。
モールも、窃盗や売春など、当時の社会では道徳的に許されない行為を繰り返します。しかし、デフォーはモールの行為を一方的に断罪するのではなく、彼女を取り巻く社会状況や心理描写を通して、読者にモールの行動の理由を理解させようと試みています。
このような悪漢小説の特徴を取り入れることで、デフォーは当時の社会問題や人間の本質に迫るリアリティ溢れる作品を創り出すことに成功しました。