デフォーのモール・フランダースに関連する歴史上の事件
イングランドにおける貧困と犯罪
ダニエル・デフォーの小説「モール・フランダース」は、17世紀のイングランドを舞台に、裕福で道徳的な生活を送るために、もがき、犯罪に手を染める女性、モール・フランダースの物語です。この時代、イングランドは大きな社会的、経済的変化を遂げており、その変化が小説の出来事や登場人物に大きな影響を与えています。
特に、「モール・フランダース」は、貧困と犯罪がイングランド社会に蔓延していたことを鮮明に描いています。17世紀、イングランドの人口は急増しましたが、雇用の機会は限られており、多くの人が貧困に陥りました。貧しい人々に対する公的支援はほとんどなく、多くの人が生き残るために物乞いや犯罪に頼らざるを得ませんでした。
モール・フランダース自身も貧困の犠牲者です。彼女は刑務所で生まれ、幼少期を貧困の中で過ごした後、裕福な男性に妾になることを余儀なくされます。その後、彼女は泥棒、売春婦、そして詐欺師となり、当時のイングランドでは数少ない選択肢だった、違法な手段によって生計を立てようとします。
小説では、ニューゲート刑務所やミントといった、17世紀のイングランドの暗黒街の現実も描かれています。ニューゲート刑務所は悪名高い刑務所で、囚人は劣悪な環境下で暮らしており、病気や飢餓が蔓延していました。ミントは、債務者や犯罪者たちが集まる、法律のない地域でした。デフォーは、モールをこうした場所に置くことで、貧困と犯罪がはびこる社会の残酷な現実を浮き彫りにしています。