## デフォーの『モール・フランダース』の普遍性
普遍的なテーマ：貧困と社会における女性の立場
『モール・フランダース』は、18世紀のイギリス社会における貧困と、女性の社会的地位の低さという普遍的なテーマを扱っています。主人公モールは、貧困から抜け出すために、様々な手段で生き抜こうとします。彼女は、当時の社会において女性が経済的に自立することがいかに困難であったかを、身をもって体験していきます。結婚と出産以外の選択肢が限られていた時代、女性は経済的に男性に依存せざるを得ませんでした。モールは、愛人、泥棒、そして植民地でのプランテーション経営者など、様々な顔を持つことになります。彼女の波乱万丈な人生は、当時の社会構造と、その中で生きる女性の苦悩を浮き彫りにしています。
普遍的な人間の欲望：愛と経済的安定
モールは、愛と経済的安定を求めて、様々な男性と関係を持ちます。彼女は、愛と経済的な安定を同時に得ることは難しいことを痛感し、どちらかを犠牲にすることを余儀なくされます。この葛藤は、現代社会においても共感を呼ぶものです。経済的な安定と引き換えに愛のない結婚を選ぶか、愛を優先して経済的な不安を抱えるか、という選択は、時代を超えて多くの人々が直面するジレンマです。モールの物語は、人間にとって普遍的な欲望である愛と経済的安定の両立の難しさを、鋭く描き出しています。
普遍的な人間の心理：道徳と欲望の葛藤
モールは、自身の行動の是非に常に葛藤を抱えています。彼女は、道徳的に正しい行いよりも、自身の欲望を満たすことを優先してしまうことが多くあります。しかし、その一方で、自らの行いに罪悪感を抱き、良心との葛藤に苦しむ様子も描かれています。この道徳と欲望の葛藤は、人間であれば誰しもが経験するものであり、時代を超えて共感できる部分と言えるでしょう。モールの物語は、人間の本質的な弱さや、善悪の狭間で揺れ動く心の複雑さを浮き彫りにしています。