## デフォーの『モール・フランダース』の思考の枠組み
モールの道徳観
モール・フランダースは、複雑でしばしば矛盾した道徳観を持つキャラクターとして描かれています。彼女は自身の行動を正当化しようとしますが、同時に罪悪感や後悔の念に苛まれる様子も描かれています。
モールの道徳観は、幼少期の貧困と社会に見捨てられた経験によって大きな影響を受けています。彼女は生き延びるためには手段を選ばないという考え方を身につけており、それが盗みや売春といった犯罪行為に手を染めることに繋がっていきます。
モールは自身の置かれた状況を、社会構造や男性中心主義的な社会の犠牲者であるという視点から捉えようとします。彼女は自身の行動を、社会から与えられた限られた選択肢の中で最善を尽くそうとした結果であると正当化しようとします。
経済的安定への執着
モールは経済的な安定と社会的地位を強く求める気持ちが描かれています。それは、幼少期の貧困体験からくる強い不安感の裏返しとも言えます。
彼女は経済的な安定を手に入れるためには、結婚や愛人関係を手段として利用することも厭いません。彼女にとって経済的な安定は、単なる物質的な豊かさだけでなく、自尊心や社会からの承認を得るための手段としても捉えられています。
自己認識と自己欺瞞
モールは自己認識の高い人物として描かれており、自身の行動や思考を客観的に分析しようとします。彼女は日記の中で自身の罪悪感や後悔の念を赤裸々に告白し、倫理的な葛藤と向き合おうとする様子が見られます。
しかし一方で、モールは自己欺瞞に陥ることも少なくありません。彼女は都合の悪い事実から目を背けたり、自身の行動を正当化するために詭弁を弄したりする様子も描かれています。
社会に対する批評性
『モール・フランダース』は、当時のイギリス社会における貧困、階級格差、女性に対する抑圧といった社会問題を鋭く批判している作品でもあります。
モールの生き様は、社会構造の矛盾や不条理さを浮き彫りにする役割を果たしています。彼女は社会から見捨てられた人々の象徴として描かれており、その苦悩を通して当時の社会の暗部が描き出されています。