Skip to content Skip to footer

デカルトの方法序説を読む前に

デカルトの方法序説を読む前に

デカルトという人物について知る

「我思う、ゆえに我あり」で有名なデカルトは、16-17世紀のフランスの哲学者、数学者、科学者です。合理主義哲学の祖とされ、近代哲学の創始者の一人として極めて重要な人物です。彼の影響は哲学にとどまらず、数学、物理学、生理学など多岐にわたります。

デカルトが生きた時代は、中世的な価値観から近代的な価値観への転換期にあたり、宗教改革や地動説の提唱など、それまでの常識が覆される出来事が相次ぎました。このような時代背景の中で、デカルトは伝統的な権威や学説に盲従することなく、自らの理性に基づいて真理を追求しようと試みました。

方法序説が書かれた背景を理解する

「方法序説」は、1637年に出版されたデカルトの著作です。原題は “Discours de la méthode” で、「方法についての談話」という意味です。この著作は、デカルト自身の哲学体系を解説したものではなく、彼がどのようにして真理に到達しようとしたのか、その方法について述べたものです。

当時の学問の世界では、アリストテレスの論理学が重視され、スコラ哲学と呼ばれる複雑な体系が構築されていました。しかし、デカルトはそうした既存の学問の方法に疑問を抱き、より確実な知識を得るための新しい方法を模索していました。

「方法序説」は、ラテン語ではなく、当時のフランスでは一般的に使用されていたフランス語で書かれています。これは、デカルトが学者だけでなく、より多くの人に自らの思想を理解してもらいたいと考えたためです。

方法序説の内容を簡単に把握する

「方法序説」は、6つの部分から構成されています。

* 第1部:良識について
* 第2部:私が用いた方法の規則
* 第3部:道徳上の規則をいくつか探求する
* 第4部:魂と肉体の区別、これによって私は、動物にはないものを私たちが持っていることを証明する
* 第5部:肉体の構造
* 第6部:この方法を物理学においてさらに進めること、およびこの方法によって、私が取り組んできた他の諸学問について

この中でも特に重要なのは、第1部と第2部です。第1部では、人間の理性はすべての人に平等に備わっているとし、正しい方法で理性を使えば誰でも真理に到達できると主張しています。第2部では、デカルトが確実な知識を得るために用いた方法として、以下の4つの規則が提示されます。

1. 明晰判明なEvidenteなもの、すなわち明晰かつ判明に精神に提示されるもの以外は、決して真として受け入れないこと。
2. 考察するすべての問題を、できるだけ多くの、しかも問題をよりよく解決するために必要なだけの部分に分割すること。
3. 最も単純なもの、かつ認識しやすいものから始め、徐々に最も複雑なものの認識へと昇っていくという秩序に従って思考を導くこと。
4. あらゆる場合において、完全な枚挙と全体にわたる吟味とを行い、いかなる見落としもないことを確かめること。

これらの規則は、今日の科学的方法にも通じるものであり、「方法序説」が近代思想の出発点とされる所以です。

Amazonで購入する

Leave a comment

0.0/5