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デカルトの方法序説の対極

## デカルトの方法序説の対極

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理性主義に対する経験主義

デカルトの『方法序説』は、理性に基づいた演繹的な方法を用いて真理を探求する、理性主義の代表的な著作として知られています。 一方、デカルトの方法序説の対極に位置する作品群は、経験主義の立場をとります。経験主義は、感覚経験や観察から得られる知識を重視し、帰納的な方法によって真理に到達しようとします。

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ジョン・ロックの『人間悟性論』

イギリスの哲学者ジョン・ロックの主著『人間悟性論』(1689年)は、経験主義の立場から人間の知識の起源と限界について考察した、経験主義哲学の金字塔といえる作品です。ロックはこの著作の中で、人間は生まれながらにして白紙の状態(タブラ・ラサ)であり、あらゆる知識は経験を通して後天的に形成されると主張しました。

ロックは、経験を「感覚による経験」と「内観による経験」の二つに分類しました。「感覚による経験」とは、外部世界からの感覚刺激を通して得られる経験であり、「内観による経験」とは、自身の心の内面を観察することによって得られる経験です。そして、あらゆる知識は、この二つの経験から得られる単純観念を素材として、結合や抽象化といった心の働きによって構成されるとしました。

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デイヴィッド・ヒュームの『人間本性論』

スコットランドの哲学者デイヴィッド・ヒュームの主著『人間本性論』(1739-40年)もまた、デカルトの理性主義とは対照的な経験主義の立場をとる作品です。ヒュームは、ロックの経験主義をさらに徹底させ、因果関係や自己同一性といった、私たちが当然のことと考えている概念にさえも、経験的な根拠がないことを明らかしようとしました。

ヒュームによれば、私たちが経験できるのは、ある事象が別の事象に時間的・空間的に接して起こるという事実だけであり、そこには因果関係を示すような必然的なつながりは一切含まれていません。因果関係は、あくまでも過去の経験から習慣的に結びつけられた観念にすぎず、未来においてもそれが成り立つという保証はどこにもない、というのがヒュームの主張です。

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経験主義の影響

ロックやヒュームをはじめとする経験主義者たちの思想は、その後の哲学や科学の発展に多大な影響を与えました。特に、人間の知識の限界を厳密に問い直すヒュームの懐疑主義は、カントの批判哲学を生み出すきっかけとなり、現代の科学哲学や認識論においても重要な論点であり続けています。

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