## デカルトの方法序説の周辺
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時代背景
17世紀ヨーロッパは、中世スコラ哲学の権威が衰え、新しい科学的思考が台頭してきた時代でした。天動説に代わる地動説が提唱され、実験や観察に基づく近代科学が発展しつつありました。このような時代背景の中、デカルトは伝統的な学問の権威に疑問を抱き、確実な知識の獲得を目指しました。
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方法序説の内容と目的
「方法序説」は、1637年に出版されたデカルトの哲学的著作です。原題は “Discours de la méthode” (フランス語) で、「方法についての談話」という意味です。副題に “Pour bien conduire sa raison, et chercher la vérité dans les sciences” (正しく理性を使うため、および諸学問において真理を探求するための方法についての談話) とあり、その名の通り、デカルトが自身の哲学を構築するに至った方法論について解説しています。
「方法序説」は、6つの部分から構成されています。
* 第一部:諸学問におけるデカルトの歩み
* 第二部:デカルトの用いた方法の規則
* 第三部:道徳に関する暫定的な規則
* 第四部:魂と肉体の区別、および神の存在と魂の不滅性の証明
* 第五部:物理学における諸問題、とりわけ心臓の運動と医学におけるいくつかの問題
* 第六部:哲学研究を行うための諸条件
デカルトは、この著作の中で、以下の4つの規則からなる方法を提唱しました。
1. 明証的に真であると認識できるものだけを真として受け入れること。(明証性の規則)
2. 困難をできるだけ多くの部分に分割すること。(分析の規則)
3. 最も単純なものから始めて、徐々に複雑なものへと順序立てて認識すること。(総合の規則)
4. 全体を見直し、何も見落としがないかを確認すること。(枚挙の規則)
これらの規則を用いることで、偏見や先入観にとらわれずに、確実な知識を獲得できるとデカルトは考えました。
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方法序説の影響
「方法序説」は、近代哲学の出発点とされ、その後の西洋思想に大きな影響を与えました。特に、合理主義や近代科学の発展に大きく貢献しました。デカルトの提唱した方法論は、現代においても、様々な分野で応用されています。