## ディルタイの精神科学序説の表現
###
表現の二重性
ディルタイにおいて、「表現」は重要な概念であり、その意味は多岐にわたります。まず、
「表現」は客観的に存在する作品や行為といった「表現されたもの」を指します。一方で、「表現」は、
人間の内的体験、つまり感情や思考といった「表現するもの」をも意味します。ディルタイは、
この二つの側面を不可分に結びつけ、人間の精神活動を理解しようとしたのです。
###
生命表現
ディルタイは、自然科学が対象とする無機的な自然に対して、人間の精神活動を「生命」と捉えました。
そして、人間のあらゆる外的活動、すなわち芸術作品や歴史的行為などは、
この内的生命の「表現」であると考えたのです。つまり、絵画や彫刻、文学作品、
そして歴史上の出来事などは、それを生み出した人間の内的体験の痕跡として理解されます。
###
理解と解釈
ディルタイは、自然科学が客観的な法則に基づいて自然現象を「説明」しようとするのに対し、
精神科学は「理解」を通して人間の精神活動を解明しようとしました。そして、この「理解」において
重要な役割を果たすのが、「表現」の解釈です。つまり、作品や行為といった「表現されたもの」を
解釈することによって、それを生み出した人間の内的体験を理解することができるというわけです。
###
表現の多様性
ディルタイは、「表現」の形式が多種多様であることを強調しました。言語、
芸術作品、制度、慣習など、人間の精神活動は様々な形で表現されます。
そして、これらの多様な表現形式を分析し、解釈することによって、
人間の精神活動をより深く理解することが可能になるのです。