## ツルゲーネフの父と子の話法
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語り手
「父と子」の語り手は、作中人物の一人ではなく、外部から物語を俯瞰する、いわゆる「全知 narrator」です。
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視点
語り手は全知 narrator ではありますが、基本的には主人公であるバザーロフの視点から物語を捉えています。バザーロフの行動や思考、感情は詳細に描写される一方、他の登場人物の心情は、バザーロフを通して間接的に示される場合がほとんどです。
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語りの特徴
「父と子」の語りは、客観的かつ冷静なトーンで統一されています。語り手自身の意見や解釈を直接的に述べることは避け、登場人物たちの行動や発言を淡々と描写することで、読者自身の判断に委ねるような姿勢が貫かれています。
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会話文の役割
「父と子」では、登場人物たちの会話文が重要な役割を果たしています。特に、バザーロフとパーヴェル・ペトローヴィチの論争は、当時のロシア社会における世代間対立や思想対立を象徴するものとして描かれています。会話文を通して、登場人物たちの性格や思想、人間関係が浮き彫りにされていきます。
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詳細な描写
風景描写や人物描写は非常に詳細で、読者はまるでその場に居合わせるかのような臨場感を味わうことができます。風景描写は、登場人物の心情と呼応している場合が多く、物語全体の雰囲気を醸し出す効果も担っています。人物描写においては、外見だけでなく、服装や持ち物、癖なども細かく描写されることで、登場人物の性格や社会的地位がより鮮明に浮かび上がります。