ツルゲーネフの父と子と作者
登場人物と作者の関係性について
イワン・ツルゲーネフの小説『父と子』は、1860年代のロシアにおける世代間対立と社会変革を描いた作品として知られています。作中に登場する主人公バザロフは、当時のロシアで台頭していたニヒリズムと呼ばれる思想を体現する人物として描かれ、伝統的な価値観を持つ父世代と激しく対立します。
作者自身の思想との関連性
ツルゲーネフ自身はニヒリズムを信奉していたわけではありませんでしたが、当時のロシア社会が抱える問題や若者世代の意識変化には強い関心を抱いていました。彼はバザロフという人物像を通して、既存の権威や伝統に疑問を投げかけることの重要性を訴えようとしました。
執筆当時の社会背景
『父と子』が発表された1862年は、ロシアでは農奴解放令が出された直後であり、社会全体が大きな転換期を迎えていました。そうした時代の変化の中で、若者世代を中心に、古い価値観を否定し、新しい社会を築こうとする動きが活発化していました。ツルゲーネフはそうした社会の潮流を敏感に捉え、『父と子』の執筆に取り組みました。