ツルゲーネフの煙の評価
作品概要
1867年に発表されたイワン・ツルゲーネフの長編小説。
当時のロシアの進歩的青年層（特に西欧主義者）と、保守的層（スラヴ主義者）の対立を、
ドイツの保養地バーデン＝バーデンを舞台に、恋愛を絡めて風刺的に描いた作品。
批評
「煙」は発表当時、その政治的、思想的な内容から、ロシア国内で大きな論争を巻き起こした。
肯定的な評価
* **リアリズムの傑作**: 登場人物の心理描写や社会背景の描写が秀逸であり、当時のロシア社会の空気をリアルに描き出していると評価されている。
* **風刺の鋭さ**: 西欧主義者、スラヴ主義者の双方を皮肉たっぷりに描いており、その風刺の鋭さが評価されている。
* **普遍的なテーマ**: 進歩と保守の対立、恋愛における理想と現実のギャップなど、時代を超えて共感を呼ぶ普遍的なテーマが描かれている点が評価されている。
否定的な評価
* **登場人物への共感の欠如**: 登場人物がステレオタイプ的であり、共感しにくいという指摘がある。
* **結末の唐突さ**: 主人公の行動や恋愛の結末が唐突であり、読者に釈然としない印象を与えるという意見がある。
* **政治的な偏り**: 西欧主義者に対する批判が強く、スラヴ主義者に対しては比較的寛容であるとの指摘があり、作者の政治的な立場が作品に反映されているという意見もある。
後世への影響
「煙」は、ロシア文学におけるリアリズム小説の代表作の一つとして、後世の作家たちに多大な影響を与えた。
また、当時のロシア社会の状況を理解する上で重要な作品としても高く評価されている。