ツルゲーネフの初恋に影響を与えた本
ゲーテの『若きウェルテルの悩み』
イワン・ツルゲーネフの『初恋』は、若き日の燃えるような恋とそのほろ苦い結末を描いた、忘れがたい小説です。 この作品に深い影響を与えた一冊として挙げられるのが、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの書簡体小説『若きウェルテルの悩み』です。
『若きウェルテルの悩み』は、婚約者のいる女性シャルロッテに恋をしてしまった青年ウェルテルの苦悩と破滅を描いた作品です。 ウェルテルの激しい感情、叶わぬ恋に苦しむ姿、そして最後には自ら命を絶ってしまうという結末は、当時のヨーロッパ社会に大きな衝撃を与えました。
ツルゲーネフの『初恋』にも、『ウェルテル』の影響は色濃く現れています。 主人公の少年ヴォロージャが恋焦がれるジナイーダは、美しく奔放でありながら、どこか手の届かない存在として描かれています。 ヴォロージャはジナイーダへの激しい恋情に翻弄され、苦悩します。
『ウェルテル』と『初恋』の共通点は、叶わぬ恋に苦しむ主人公の姿だけではありません。 どちらの作品も、自然の描写が美しく、繊細な心理描写がなされている点も共通しています。 ツルゲーネフは、ゲーテの文章表現から大きな影響を受けていたと考えられます。
『初恋』は、単に『ウェルテル』の影響を受けた作品というだけでなく、ツルゲーネフ自身の経験やロシアの社会状況を反映した、独自の文学作品として高い評価を得ています。 しかし、若き日の燃えるような恋とそのほろ苦い結末を描いた作品世界は、『ウェルテル』の影響なしに語ることはできません。