チョーサーのトロイラスとクリセイデの関連著作
ボッカッチョのフィローストラト
チョーサーの『トロイラスとクリセイデ』の主な原典は、ジョヴァンニ・ボッカッチョの叙事詩『フィローストラト』です。1330年代に書かれた『フィローストラト』は、トロイア戦争を背景にトロイラスとクリセイデの恋を描いています。チョーサーの詩と同様に、ボッカッチョの物語も、愛、喪失、運命の気まぐれというテーマを探求しています。チョーサーはボッカッチョの筋書きと登場人物を忠実に翻案していますが、自身の詩に独自の味付けと哲学的な深みを加えています。
ホメロスのイーリアス
ボッカッチョとチョーサーの両方の作品は、ホメロスの叙事詩『イーリアス』からインスピレーションを得ており、これはトロイア戦争とその周辺の出来事を記したものです。トロイラスとクリセイデの物語はホメロスの原典には直接出てきませんが、『イーリアス』はトロイア戦争中の文化的・歴史的背景を提供しており、2つの後の作品の背景となっています。特に『イーリアス』は、トロイラスの性格やクリセイデの運命を形作ったトロイア戦争における英雄的な理想、愛国心、人間の苦しみのテーマを確立しています。
ロマン・ド・ラ・ローズ
13世紀のフランスの寓意詩『ロマン・ド・ラ・ローズ』は、チョーサーの著作に影響を与えたことが知られており、『トロイラスとクリセイデ』にもその影響が見られます。ギヨーム・ド・ロリスとジャン・ド・マンが書いた『ロマン・ド・ラ・ローズ』は、求愛と宮廷恋愛の複雑さを探求しており、これらはチョーサーの詩における主要なテーマでもあります。両方の作品は、夢のビジョン、寓意的な登場人物、恋愛における人間の心の動きを探求するという文学的な慣習を共有しています。