チョーサーのカンタベリー物語の技法
物語の枠組み
チョーサーは、さまざまな社会階層の人々が集う巡礼という設定を用いることで、多様な物語を自然な形で展開しています。この「枠物語」の手法は、物語に統一感と変化を与え、それぞれの物語を際立たせる効果を生み出しています。巡礼者たちはそれぞれ異なる背景、職業、性格を持ち、彼らが語る物語は、その人物像を反映したものとなっています。
人物描写
チョーサーは、登場人物の容姿、服装、行動、言葉遣いなどを生き生きと描写することで、読者に鮮明なイメージを与えています。特に、「一般序説」では、それぞれの巡礼者を詳細に紹介することで、後の物語への期待感を高めています。それぞれの巡礼者の語り口調や物語の内容は、彼らの社会的地位や性格を反映しており、多様な人間像を浮き彫りにしています。
風刺
チョーサーは、当時の社会や教会の腐敗、人間の愚かさなどを鋭く風刺しています。たとえば、聖職者であるはずの修道院長や免罪僧の偽善的な言動は、痛烈な批判の対象となっています。しかし、チョーサーの風刺は単なる批判ではなく、ユーモアと皮肉を交えることで、読者に笑いと共感を呼び起こしています。
韻律と韻律法
「カンタベリー物語」は、中英語で書かれた初期の作品の一つであり、英雄詩などで使われていた「英雄双韻句」を採用しています。これは、弱強五歩格で、各行の末尾が韻を踏む形式です。この韻律法によって、物語は音楽的なリズムと流麗さを持ち、読者は自然と物語の世界に引き込まれていきます。