## チョーサーのカンタベリー物語からの学び
中世イングランド社会の描写
「カンタベリー物語」は、14世紀後半のイングランド社会の縮図ともいえるほど、多様な身分の人物が登場します。貴族階級から聖職者、商人、職人、農民まで、それぞれの社会的地位や職業、生活様式、価値観などが生き生きと描写されています。例えば、騎士は騎士道精神や武勇を重んじる一方、修道院長は贅沢な暮らしを好み、托鉢僧は人々を騙して金儲けを企むなど、当時の社会における様々な人間模様が浮き彫りになっています。
教会への風刺
チョーサーは、当時の教会の腐敗や堕落を痛烈に風刺しています。特に、免罪符商人の話や修道院長の話などでは、聖職者たちの偽善や貪欲さを鋭く批判しています。一方で、清貧で敬虔な田舎司祭の姿を描くことで、真の信仰心とは何かを問いかけています。
恋愛観や結婚観の多様性
「カンタベリー物語」には、騎士道の恋愛、お見合い結婚、不倫、騙し合いなど、様々な恋愛や結婚の形が描かれています。騎士の物語のように、宮廷風の恋愛を理想とする一方で、バース婦人の物語のように、女性の性的欲望や結婚における主導権を主張する話もあり、当時の社会における多様な恋愛観や結婚観を垣間見ることができます。
物語の構造
「カンタベリー物語」は、巡礼者たちがカンタベリーへ向かう旅の途中に、それぞれが物語を語るという枠物語の構造をとっています。それぞれの物語は独立していながらも、登場人物たちの会話や関係性によって有機的に結びついており、物語全体に深みと広がりを与えています。また、物語の中には、喜劇、悲劇、ロマンス、教訓話など、様々なジャンルが含まれており、チョーサーの優れた物語構成力を感じ取ることができます。
中英語による文学
「カンタベリー物語」は、英語で書かれた最初期の文学作品の一つであり、中英語の貴重な資料としても高く評価されています。当時の口語や方言が生き生きと描写されており、現代英語とは異なる文語表現や語彙なども多く見られます。