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チョムスキーの文法の構造の対極

チョムスキーの文法の構造の対極

チョムスキーへの直接的な反論ではなく、異なる言語学的アプローチを提示した書物について解説します。

チョムスキーの「文法の構造」(1957年) は、人間の言語能力の根底にある普遍的な文法規則を明らかにしようとする生成文法の基礎を築いた画期的な著作です。この著作は、行動主義心理学が主流であった当時の言語学に革命をもたらし、人間の心の中に生得的な言語獲得装置が存在するという主張は、大きな論争を巻き起こしました。

一方、チョムスキーの理論に対極をなすものとして、フェルディナン・ド・ソシュールの「一般言語学講義」(1916年) を挙げることができます。この著作は、ソシュールがジュネーブ大学で行った講義内容をまとめたものであり、構造主義言語学の基盤を築いたとされています。

ソシュールは、言語を「記号の体系」と捉え、個々の記号の意味は、他の記号との関係性によって決定されると主張しました。これは、チョムスキーが重視した個人の内的文法規則とは対照的に、言語の社会的な側面を強調するものでした。

ソシュールの「一般言語学講義」の詳細

「一般言語学講義」は、言語の研究対象を「langue」(言語)と「parole」(言語活動)に明確に区別した点で革新的でした。「langue」は、特定の社会で共有される抽象的な記号体系であり、「parole」は、個々の言語使用者が具体的な場面で「langue」を用いる行為を指します。

ソシュールは、「langue」の構造を明らかにすることが言語学の主要な課題であると主張し、記号の恣意性、共時的分析の重要性、記号の価値と差異の概念など、現代言語学の基礎となる多くの重要な概念を提唱しました。

「一般言語学講義」は、チョムスキーの生成文法とは異なる方向から言語の本質に迫るものであり、言語の社会的な側面、記号の体系としての側面を強調することで、20世紀以降の言語学、記号論、文学理論などに多大な影響を与えました。

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