## チューリングの計算機械と知能に匹敵する本
###
ゲーデル、エッシャー、バッハ ― あるいは不思議の環
ダグラス・ホフスタッター著「ゲーデル、エッシャー、バッハ ― あるいは不思議の環」は、1979年に出版された、数学、音楽、美術、そして人工知能といった多岐にわたる分野を横断しながら、自己言及のパラドックスという共通項で結びつける壮大な作品です。
本書は、ゲーデルの不完全性定理、エッシャーの錯視絵画、バッハのカノンといった一見無関係に見えるテーマを巧みに織り交ぜながら、人間の思考、意識、そして人工知能の可能性について深く考察していきます。形式システムの限界、自己言及の奇妙なループ、そして意味と表現の関係といった複雑な概念を、対話形式やユーモラスな語り口を用いて分かりやすく解説している点が特徴です。
チューリングの論文が計算機の概念を通して人間の思考を探求したのに対し、「ゲーデル、エッシャー、バッハ」は、より抽象的なレベルで、人間の意識の謎に迫ります。自己言及という概念を軸に、人間の思考の複雑さと奥深さを描き出し、人工知能の可能性と限界について示唆に富む議論を展開している点が、本書を「計算機械と知能」に匹敵する作品たらしめていると言えるでしょう。