## ダーウィンの種の起源の発想
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ビーグル号航海における観察
1831年から1836年にかけて、チャールズ・ダーウィンはイギリス海軍の測量船ビーグル号に博物学者として乗船し、世界一周の航海に参加しました。航海中、ダーウィンは各地の地質や動植物を観察し、標本を収集しました。特に、ガラパゴス諸島で観察された、島ごとに異なる形態を持つゾウガメやフィンチは、ダーウィンに種の進化に関する考察を深める大きなきっかけを与えました。
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マルサスの「人口論」の影響
1798年に出版されたトマス・ロバート・マルサスの「人口論」は、ダーウィンに大きな影響を与えました。マルサスは、人口は幾何級数的に増加する一方、食料生産は算術級数的にしか増加しないため、人口増加が抑制されなければ、飢饉や貧困が必然的に発生すると主張しました。ダーウィンはこの考え方を生物全体に適用し、生物は限られた資源を巡って生存競争を繰り広げていると解釈しました。
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人工選択による品種改良の観察
ダーウィンは、人間が家畜や植物に対して行ってきた品種改良にも注目しました。人間は、より優れた形質を持つ個体を選抜し、交配させることで、望ましい品種を作り出すことができます。この人工的な選択を繰り返すことで、元の種とは大きく異なる品種が生まれます。ダーウィンは、自然界においても、環境への適応力が高い個体がより多くの子孫を残すことで、種が変化していく可能性があると考察しました。
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自然選択説の着想
ビーグル号航海での観察、マルサスの人口論、そして人工選択の観察から、ダーウィンは自然選択説を着想しました。自然選択説は、以下の4つの前提に基づいています。
1. **個体間の変異**: 同じ種の個体間には、形態や行動など様々な形質に違いがある。
2. **遺伝**: 親の形質は子に受け継がれる。
3. **繁殖力**: すべての生物は、自分が生き残るのに十分な数以上の子孫を残す能力を持つ。
4. **生存競争**: 生物は限られた資源を巡って競争しており、環境に適した形質を持つ個体が生き残り、子孫を残す確率が高い。
これらの前提から、環境に適した形質を持つ個体がより多くの子孫を残すことで、その形質が集団内で広まり、長い時間をかけて種が変化していくとダーウィンは考えました。これが自然選択による進化の概念です。