## ダンテの煉獄篇の原点
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聖書の教え
ダンテの「神曲」は、キリスト教的世界観に基づいており、「煉獄篇」もその例外ではありません。 カトリック教会では伝統的に、地獄と天国の間には、死後に罪を浄化するための場所があるとされてきました。ダンテは、この教えを作品に取り入れ、「煉獄」という具体的な場所として描き出したのです。
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当時の社会背景
14世紀初頭のイタリアは、都市国家間の争いや教会内部の腐敗など、混乱の時代でした。ダンテ自身も、政争に巻き込まれ、フィレンツェからの追放を経験しています。こうした時代背景の中、人々の間では、罪の償いと魂の救済に対する関心が高まっていました。ダンテは、「煉獄篇」を通して、当時の社会が抱える問題や人々の不安を反映したと言えるでしょう。
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古典文学の影響
ダンテは、古代ギリシャ・ローマの古典文学に深く傾倒していました。 特に、ウェルギリウスの「アエネーイス」は、「神曲」全体の構成や描写に大きな影響を与えています。 「アエネーイス」では、主人公アエネーアスが冥府を訪れる場面が描かれていますが、ダンテは、この場面を参考にしながらも、独自の解釈を加え、「煉獄」という空間を作り上げました。
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ダンテ自身の経験
「煉獄篇」は、ダンテ自身の個人的な経験や思想が色濃く反映された作品でもあります。 フィレンツェを追放されたダンテは、流浪の生活を送りながら、自らの罪を振り返り、魂の救済を切望していました。 「煉獄篇」は、ダンテ自身の苦悩と希望を投影した、内省的な側面も持ち合わせていると言えるでしょう。