## ダンテの天国篇の技法
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韻律
ダンテの「神曲」は全編を通して terza rima と呼ばれる韻律が用いられています。これは、ABA BCB CDC … というように、3行ごとに韻を踏む形式で、前の stanza の第2行目が次の stanza の第1, 3行目と韻を踏むことで、詩全体に流れるような繋がりを生み出しています。「天国篇」もこの韻律に従って書かれており、天国の上昇と浄化というテーマを表現する上で重要な役割を果たしています。
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象徴主義
「天国篇」は、文字通りの天国の描写であると同時に、魂の救済と神への到達を象徴的に表現しています。ダンテは、光、音楽、幾何学模様といった要素を駆使し、天国の霊的な美しさと神の完全性を表現しています。例えば、光は神の恩寵や知識を象徴し、上昇するにつれて輝きを増していきます。また、天球の構造や運行は、神の秩序と宇宙の調和を象徴しています。
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寓意
「天国篇」には、表面的な物語の下に、深い寓意が隠されています。ダンテは、自身の旅を通して、人間の魂の浄化と救済の過程を描くと同時に、当時の政治や社会に対する批判、キリスト教神学に関する考察などを織り交ぜています。例えば、ベアトリーチェは、ダンテを天国へと導く案内役であると同時に、神への愛や信仰を象徴する存在として描かれています。
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登場人物
「天国篇」には、歴史上の人物や聖書の人物、そしてダンテ自身の知人など、実在の人物をモデルにした登場人物が多数登場します。彼らは、それぞれの生前の行いや思想を反映した姿で描かれ、ダンテとの対話を通して、天国における魂の状態や神の正義、愛の力などについて語ります。例えば、ダンテは、ローマ皇帝ユスティニアヌスから法と正義について学び、聖トマス・アクィナスからは神学の奥義について教えられます。