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ダンテの天国篇の思想的背景

## ダンテの天国篇の思想的背景

### 1.

中世キリスト教神学

「天国篇」は、**トマス・アクィナスの神学**の影響を強く受けています。アクィナスはアリストテレス哲学をキリスト教に取り入れた人物であり、「神の国」における秩序や階層性を体系化しました。ダンテはこの思想に基づき、天国を**九つの天球**からなる構造として描いています。各天球は特定の天使の階級と virtudes(徳)に対応しており、上昇するにつれて神の光と愛に近づいていく様子が表現されています。

### 2.

聖書の解釈

ダンテは「天国篇」において、聖書、特に**新約聖書**からの引用や寓意を多用しています。たとえば、ベアトリーチェの導きは、「ヨハネによる福音書」におけるイエスとマリアの関係を暗示しています。また、天国における聖人たちの配置は、「ルカによる福音書」の「善人のおこないにしたがって報いがある」という一節を反映しています。

### 3.

アウグスティヌスの影響

ダンテはアウグスティヌスの思想、特に**「告白」**の影響も受けています。ダンテ自身の回心と救済への道のりは、「告白」におけるアウグスティヌスの内的遍歴と類似しています。また、「天国篇」における光と闇の対比や、神の恩寵の重要性などは、アウグスティヌスの思想と深く関わっています。

### 4.

中世の宇宙観

「天国篇」の宇宙構造は、**プトレマイオスの天動説**に基づいています。地球を中心とした同心円状の天球が描かれ、ダンテはベアトリーチェと共にこの天球を上昇していきます。この宇宙観は、当時のキリスト教世界において広く受け入れられていたものであり、ダンテの作品にも反映されています。

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