## ダイシーの法と世論の評価
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ダイシーの主張
イギリスの法学者A・V・ダイシーの著書『法と世論』(Law and Opinion in England, 1905年)は、19世紀イギリスにおける法の形成過程において世論が重要な役割を果たしたことを主張した著作です。ダイシーは、立法や判例といった法の形式的な淵源だけでなく、社会全体の共通認識や道徳観、思想といった「世論」が法に影響を与えると考えました。
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評価
ダイシーの主張は、法が社会から独立した閉鎖的なシステムではなく、社会と相互に影響し合う動的なシステムであることを示唆した点で画期的でした。法の社会学的分析という新たな視点を提供し、後の法社会学の発展に大きく貢献したと評価されています。
一方で、ダイシーの主張は以下のような点で批判を受けています。
* **「世論」の定義が曖昧:** ダイシーは「世論」を明確に定義しておらず、どの程度の広がりを持つ意見を指すのか不明瞭です。
* **世論の影響力を過大評価:** 法の形成過程において、政治権力や経済力などの要素を軽視し、世論の影響力を過大評価しているという指摘があります。
* **19世紀イギリスに限定された分析:** ダイシーの分析は19世紀イギリスを対象としており、他の時代や地域にもそのまま適用できるかは議論の余地があります。
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結論
ダイシーの『法と世論』は、法と社会の関係性を明らかにしようとした先駆的な著作として評価されています。一方で、「世論」の定義の曖昧さや、他の要素を軽視しているなどの批判もあります。結論として、ダイシーの主張は、法と社会の関係性を考える上での重要な視点を提供する一方で、その限界も認識する必要があります。