## ダイシーの法と世論の表象
ダイシーの法概念
ダイシーは、法を「国家によって裏付けられた強制力によって執行が認められた規則」と定義しました。彼は、法の起源を、国家の強制力と、その強制力を背景とした規則の制定と執行に見出しました。ダイシーにとって、個人の権利や自由は、法によって保障されるものであり、法は、恣意的な権力の行使から個人を守るための重要な役割を果たすと考えました。
世論の影響
ダイシーは、法の形成と発展における世論の重要性を認識していました。彼は、法は社会の現実を反映したものであり、社会の価値観や道徳観の変化に応じて変化していくべきだと主張しました。そして、世論は、社会の価値観や道徳観を形成する上で大きな影響力を持つと認めました。
ダイシーは、議会制民主主義の下では、世論は選挙を通じて政治に影響を与え、法律の制定や改正を促すことができると論じました。また、裁判官も、判決を下す際に、社会通念や一般常識を考慮に入れるため、間接的に世論の影響を受けるとしました。
世論と法の緊張関係
ダイシーは、法と世論の関係が常に調和的であるとは限らないことも認識していました。彼は、時として、世論が感情的になり、短絡的な判断に陥る可能性を指摘しました。そのような場合には、法は、世論の圧力に屈することなく、個人の権利や自由を保護する役割を果たさなければならないと主張しました。
ダイシーは、法は、世論に迎合するのではなく、世論を啓蒙し、正しい方向に導く役割を担うべきだと考えました。彼は、法曹の役割は、法の専門家として、世論と対話し、法の精神や理念を広く社会に理解させることだと強調しました。