## ダイシーの法と世論の技法
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法的有効性と世論の関係
ダイシーは、「法と世論」において、法の制定・改廃・解釈に対する世論の影響について歴史的観点から分析しています。彼は、特定の時期におけるイギリス法を分析し、法律と世論の間に密接な関係があると主張しました。
ダイシーは、世論を「社会のある特定の時期における特定の問題についての共通の信念または感情」と定義しました。そして、世論は法律に直接的・間接的に影響を与えると考えました。直接的な影響は、世論が立法府に圧力をかけて法律を制定・改廃させることで現れます。間接的な影響は、裁判官が判決を下す際に世論を考慮することで現れます。
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歴史的分析
ダイシーは、18世紀後半から19世紀にかけてのイギリスを例に、法律と世論の関係を具体的に示しました。この時期は、産業革命やフランス革命の影響を受け、社会構造や人々の価値観が大きく変化した時代でした。
彼は、この時期のイギリス法の変化を、個人の自由を重視する「個人主義」から、社会全体の福祉を重視する「集団主義」への移行として捉えました。そして、この変化の背景には、労働者階級の台頭や社会主義思想の広まりなど、世論の変化があったと分析しました。
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批判
ダイシーの分析は、法律と世論の関係を明らかにした重要な研究として評価されています。しかし、彼の分析はイギリスという特定の国における特定の時期に限定されており、普遍的な法則として受け入れることには注意が必要です。
また、ダイシーは「世論」を単一の、均質なものであるかのように扱っていますが、現実には社会には様々な意見が存在し、常に変化しています。彼の分析は、世論の複雑さを十分に捉えきれていないという批判もあります。