ダイシーの法と世論の仕組み
ダイシーの法と世論の関係
イギリスの法学者、アルバート・ヴァン・ダイシー(1835-1922)は、主著『法と世論』 (1905年) において、法の形成・発達における世論の役割を重視しました。ダイシーは、特定の時点における法は、その社会における支配的な世論を反映したものであると論じました。
世論が法に影響を与えるプロセス
ダイシーによれば、世論は直接的・間接的に法に影響を与えます。
* **直接的な影響:** 社会における道徳観や正義感の変化が、法律の制定や改正を直接的に促す場合があります。例えば、奴隷制に対する世論の高まりが、奴隷制廃止法の制定に繋がったケースなどが挙げられます。
* **間接的な影響:** 世論は、裁判官の判断や法曹家の解釈を通じて、徐々に法に影響を与えることもあります。社会通念の変化は、裁判官が判決を下す際の判断基準に影響を与え、結果として法の解釈や運用を変えていく可能性があります。
ダイシーの理論における注意点
ダイシーの理論は、法と世論の関係を説明する上で重要な視点を提供する一方で、以下の点に留意する必要があります。
* **「世論」の定義:** ダイシーは、「世論」を支配的な意見や信念と定義していますが、現実には社会には多様な意見が存在します。「世論」をどのように捉えるかによって、法との関係も変化します。
* **影響の時間差:** 世論の変化が法に反映されるまでには、一定の時間差が生じることがあります。特に、立法機関による法改正には時間がかかる場合があり、世論の変化がすぐに法に反映されるとは限りません。
ダイシーの理論は、法が社会から独立した存在ではなく、社会の意識や価値観と密接に関係していることを示唆しています.
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