タルチュフのオルゴンが抱く感情
モリエールの喜劇「タルチュフ」は、宗教的な偽善者であるタルチュフが、オルゴンとその家族の生活に深く食い込んでいく様子を描いています。この作品を通じて、オルゴンが抱く感情の幅広さと、その感情がどのように変化していくのかを深く探求することができます。
信頼と尊敬から始まる
物語の初め、オルゴンはタルチュフに対して絶対的な信頼と尊敬を抱いています。オルゴンはタルチュフを家に迎え入れ、彼の言葉を全て真実として受け入れています。この信頼は、オルゴンがタルチュフを精神性の高い人物、ほぼ聖人のように見ていることから生まれています。オルゴンにとって、タルチュフの存在は、自身や家族がより良いクリスチャンとなるための手段であり、彼の言葉は神の意志の表れのように感じられます。
家族に対する盲目的な態度
オルゴンの家族はタルチュフの真の性質を見抜いており、オルゴンに警告を発していますが、オルゴンはこれらの警告を無視し、家族に対してさえも盲目的な態度をとります。この盲目性は、オルゴンの感情の複雑さを示しています。家族に対する愛情はあるものの、それがタルチュフに対する盲目的な信頼によって覆い隠されてしまっています。オルゴンにとって、タルチュフへの信頼が家族への愛よりも優先される瞬間があります。
裏切りに対する怒りと失望
物語が進むにつれて、オルゴンはタルチュフの真の意図が自分と家族を裏切ることにあるという事実に直面します。この認識は、オルゴンの感情に大きな転換をもたらします。信頼と尊敬が一転して、怒りと失望に変わります。この段階でのオルゴンの感情は、深い裏切りに対するものであり、自らの判断ミスに対する自責の念も感じられます。オルゴンが抱く怒りは、タルチュフに対するものだけでなく、自分自身と自分の盲目性に対しても向けられています。
オルゴンの感情の変化は、「タルチュフ」の物語を通じて人間の脆弱性と成長の過程を描いています。オルゴンの経験は、信頼と尊敬がどのように盲目性につながり、最終的には深い裏切りと失望に繋がるのかを示しています。しかし、この過程はまた、自己認識と成長への道も提示しており、オルゴンのキャラクターは、人間の弱さと強さの両方を体現しています。