## タキトゥスのゲルマニアの話法
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記述の客観性と主観性
タキトゥスは、ゲルマニアの風習や制度について、可能な限り客観的な記述を試みています。 彼は、ゲルマン人の起源や歴史、社会構造、軍事制度、宗教、日常生活など、多岐にわたる情報を提供しています。 特に、ローマとは異なるゲルマン人の文化や価値観を対比的に描き出すことで、読者に新鮮な視点を提供しています。
しかし、彼の記述には、ローマ人としての視点や価値観が反映されていることも事実です。 例えば、ゲルマン人の勇猛さや質実剛健さを賞賛する一方で、彼らの未開性や野蛮性を強調するような記述も見られます。 また、ゲルマン社会の負の側面、例えば、飲酒の習慣や女性の地位の低さなどについても触れています。
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修辞技法と表現
タキトゥスは、簡潔で力強い文体で知られており、「ゲルマニア」においても、その特徴が顕著に表れています。 短い文節を多用し、リズム感のある文章を作り出すことで、読者に強い印象を与えています。 また、比喩や対句などの修辞技法を効果的に用いることで、文章に変化と深みを与えています。
さらに、彼は、具体的なエピソードや逸話を挿入することで、読者の関心を惹きつけるとともに、ゲルマン人の文化や社会に対する理解を深めています。 例えば、ゲルマン人の忠誠心や勇敢さを示すために、具体的な人物や出来事に関する記述が随所に挿入されています。
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情報源と信頼性
タキトゥスは、「ゲルマニア」を執筆するにあたって、複数の情報源を用いたと考えられています。 彼は、自身の経験に加えて、他の歴史家や地理学者の著作、そして、ゲルマン人と接触のあったローマ人商人や兵士からの証言などを参考にしたと推測されます。
しかし、彼が具体的にどのような情報源を用いたのか、また、その情報源の信頼性はどの程度であったのかについては、明確なことは分かっていません。 特に、ゲルマン人に関する情報は、伝聞や噂に基づくものが多く、その正確性については疑問視する声もあります。