タキトゥスのゲルマニアの美
ゲルマン人の肉体的特徴の描写
タキトゥスはゲルマン人の肉体的特徴を繰り返し賞賛しており、特に彼らの背丈と金髪碧眼を強調しています。 彼はその体格を大きく力強く、戦闘に適していると描写し、ゲルマン民族の軍事的な腕前と結びつけています。
例えば、ゲルマン人の体格について、タキトゥスは「彼らは皆、青い目、赤い髪、大きな体つきをしており、激しい突進にしか役に立たない」（ゲルマニア4）と述べています。 また、ゲルマン人の金髪については、「彼らは自分の子供たちの髪を洗い、年老いて初めて白髪になるまで育てている。これは彼らの中で珍しいことであり、世界から賞賛されている」（ゲルマニア39）と書いています。
しかし、タキトゥスはゲルマン人の肉体的魅力を単に述べているのではなく、ローマ人読者にとって異質なものを強調することで、彼らの野蛮さと対比させています。 文明化されたローマ人とは対照的に、ゲルマン人は自然の力強さと関連付けられており、洗練されていないが、同時により強く、より純粋な人々として描写されています。
自然の単純さと美
タキトゥスはゲルマン人の生活様式を描写する際に、その単純さと自然との調和を賞賛しています。 贅沢や過剰を嫌うゲルマン人は、ローマ人にとって野蛮に映るかもしれない質素な生活を送っています。しかし、タキトゥスはこの単純さを美徳として描き、物質的な富に執着するローマ社会の堕落を暗に批判しています。
例えば、ゲルマン人の服装について、タキトゥスは「彼らは粗末なマントを留めているか、あるいはとげで留めている」（ゲルマニア6）と述べています。 また、彼らの住居については、「彼らは家を互いに離して建てている。…彼らは小川や泉、牧草地の近くに家を建てる。これは自分たちの安全のためではなく、景観の美しさのためである」（ゲルマニア16）と書いています。
このように、タキトゥスはゲルマン人の単純さを彼らの美徳と結びつけ、ローマ社会の複雑さと対比させています。 これは、ローマの伝統的な価値観に対するノスタルジアと、物質的な富と帝国の拡大がもたらした道徳的腐敗に対する懸念を反映している可能性があります。
ゲルマン女性の美と役割
タキトゥスはゲルマン人男性の肉体的特徴だけでなく、ゲルマン人女性の美しさも賞賛しています。 彼はゲルマン人女性を強く、貞淑で、忠実であると描写し、ローマ人女性の贅沢さと退廃に対比させています。 タキトゥスによれば、ゲルマン人女性は家庭生活と子育てにおいて重要な役割を果たし、男性の戦士文化の中で尊敬されています。
ゲルマン人女性の役割について、タキトゥスは「彼らは結婚を神聖なものと考えており…ほとんど一夫一婦制であり、女性は貞節を守っている」（ゲルマニア18-19）と述べています。 また、ゲルマン人女性は男性と共に戦い、彼らを励ますことについても言及し、「戦場では、妻や子供たちの姿が戦士たちにとって最大の励ましとなる」（ゲルマニア7）と書いています。
このように、タキトゥスはゲルマン人社会における女性の地位の高さを強調し、ローマ社会における女性の役割との違いを際立たせています。 これは、当時のローマにおける女性の道徳的退廃に対する批判と、伝統的な家族の価値観を高く評価していたことを示唆している可能性があります。