タキトゥスのゲルマニアが扱う社会問題
ゲルマン人の社会における女性
タキトゥスは、ゲルマン社会における女性の役割について、ローマとは大きく異なる点があると述べています。ゲルマン人女性は、結婚後も自分の財産を所有し、夫の財産とは区別されていました。また、女性は政治や宗教の儀式にも参加することが許されており、社会的な発言力も高かったと考えられています。タキトゥスは、ゲルマン人女性が男性と比較して、より貞潔で、夫に忠実であると述べています。また、女性は戦争においても重要な役割を担っており、夫や息子を鼓舞し、時には自ら武器を取って戦うこともあったようです。
奴隷制
タキトゥスは、ゲルマン社会における奴隷制についても言及しています。ゲルマン人は、戦争捕虜や負債のために奴隷となることがありました。しかし、ローマの奴隷制と比較すると、ゲルマン人の奴隷制は比較的穏やかなものでした。ゲルマン人の奴隷は、家族を持つことや財産を所有することが許されており、一定期間が経過した後には解放されることもありました。また、主人に対する反抗が認められる場合もあり、奴隷の権利はローマに比べて保障されていました。
社会階層
タキトゥスは、ゲルマン社会が、貴族、自由民、解放奴隷、奴隷の4つの階層に分かれていたことを記しています。貴族は、政治や軍事において指導的な役割を担っていました。自由民は、土地を所有し、農業や牧畜に従事していました。解放奴隷は、かつて奴隷であった人々で、自由民と奴隷の中間的な立場にありました。奴隷は、社会の最下層に位置付けられていましたが、前述の通りローマと比べると比較的自由な立場にありました。
ローマ帝国の影響
タキトゥスは、ゲルマン人がローマ帝国の文化や社会制度から影響を受けていることに懸念を抱いていました。彼は、ゲルマン人がローマの贅沢な生活様式や退廃的な道徳観に染まってしまうことを恐れていました。実際、ゲルマン社会では、ローマの貨幣が流通し、ローマ風の建築様式が取り入れられるなど、ローマの影響は徐々に広まっていました。タキトゥスは、ゲルマン人がローマ化することによって、自分たちの伝統的な価値観や社会構造を失ってしまうことを危惧していたのです。