## ソローの市民不服従の案内
### ソローと「市民的不服従」
ヘンリー・デイヴィッド・ソロー(1817-1862)は、アメリカの思想家、作家、詩人、博物学者、そして超越主義者でした。彼は、奴隷制とメキシコ戦争に反対する納税を拒否したことで投獄され、その経験から生まれたエッセイ「市民的不服従」(Civil Disobedience)は、後の時代になってマハトマ・ガンジーやマーティン・ルーサー・キング・ジュニアなど、非暴力による抵抗運動を指導した人物たちに多大な影響を与えました。
### 「市民的不服従」の内容
「市民的不服従」の中で、ソローは個人が自らの良心に従って行動することの重要性を説き、政府の不正な法律や政策に対しては、非暴力的な抵抗によって立ち向かうべきだと主張しました。彼は、政府はあくまでも個人の自由と権利を守るために存在するものであり、もし政府がその役割を果たさず、むしろ個人の権利を侵害する場合には、市民は政府に従う義務はないとしました。
### ソローの主張
ソローは、政府は「最良の場合でも、必要悪にすぎない」と述べ、政府による個人の自由への介入を最小限に抑えるべきだと主張しました。彼は、多数決の原理にも批判的で、多数派の意見が必ずしも正しいとは限らないと指摘しました。ソローにとって重要なのは、個人が自らの良心と信念に基づいて行動することであり、たとえそれが法律に違反する行為であっても、道徳的に正しいと信じることのためには抵抗する勇気を持つべきだと訴えました。
### 「市民的不服従」の影響
ソローの「市民的不服従」は、出版当初はそれほど注目されませんでしたが、20世紀に入ってから、非暴力抵抗運動の重要な理論的支柱として再評価されました。特に、ガンジーは南アフリカで人種差別政策に抵抗する中で、ソローの思想に影響を受けたとされています。また、キング牧師も公民権運動の中で、「市民的不服従」を正当化する根拠としてソローの思想を引き合いに出しました。
### 現代社会における「市民的不服従」
今日でも、「市民的不服従」は、環境問題、人権問題、戦争反対など、様々な社会問題に対する抵抗運動の中で実践されています。ソローの思想は、市民が自らの権利と自由を守り、より公正な社会を実現するために、非暴力的な抵抗という手段を選択することの重要性を私たちに教えてくれています。