## ソローの市民不服従が扱う社会問題
1. 奴隷制
ソローは「市民不服従」の中で、アメリカにおける奴隷制を痛烈に批判しています。彼は、政府が奴隷制を容認し、それを維持するために法律を用いていることを非難します。ソローにとって、道徳的に間違った法律には従うべきではなく、むしろ積極的に抵抗することが市民の義務であると考えました。
彼は、奴隷制を容認する政府に税金を納めることを拒否することで、自らの信念を行動に移しました。税金の支払いを拒否することは、単なる政治的な抗議を超えて、彼自身の良心に従うための行為でした。 ソローは、不正な制度に加担しないためには、たとえそれが法律違反であっても、自らの行動によって抵抗することが必要だと訴えたのです。
2. メキシコ-アメリカ戦争
ソローは「市民不服従」で、メキシコ-アメリカ戦争についても批判しています。彼は、この戦争がアメリカによる領土拡張の野望に基づいた不正義な戦争であると見なしました。そして、戦争を推進する政府に抵抗するため、再び税金の支払いを拒否しました。
ソローは、政府が個人の良心に反する戦争を行う場合、市民はそれに従うべきではないと主張します。彼は、個人が道徳的に判断し、行動する自由を強く訴えました。
3. 多数派による支配の危険性
ソローは、民主主義社会における多数派による支配の危険性についても言及しています。彼は、たとえ多数派の意見であっても、それが道徳的に間違っている場合には、少数派はそれに抵抗する権利と義務を持つと主張します。
「市民不服従」の中で、ソローは政府を「最も良心に従わないもの」と表現しています。これは、政府が常に正しいとは限らず、むしろ個人の良心を抑圧する存在になり得ると考えたからです。
ソローは、真の民主主義とは、単に多数決に従うことではなく、個人が自らの良心に従って行動し、不正に抵抗できる社会だと考えました。彼は、市民一人ひとりが、不正に対して声を上げ、行動を起こすことの重要性を訴えたのです。