ソローの「市民の不服従」の思想的背景
超越主義
ソローは、理性と直観を重視し、人間精神の無限の可能性を信じる超越主義運動の中心人物の一人でした。この思想は、
「ウォールデン 森の生活」や「市民の不服従」など、彼の著作全体に色濃く反映されています。「市民の不服従」において、
ソローは、個人が自身の良心と道徳に基づいて行動する権利と義務を強く主張していますが、これは、
超越主義の根本的な信念である、個人の精神的自立と自己信頼を強く反映しています。
奴隷制反対運動
「市民の不服従」が書かれた19世紀半ばのアメリカは、奴隷制という大きな問題を抱えていました。ソローは熱心な奴隷制廃止論者であり、
逃亡奴隷を助けるための地下鉄道運動にも積極的に参加していました。彼の「市民の不服従」は、
メキシコ戦争への抗議として納税を拒否した自身の経験に基づいて書かれたものですが、
その根底には、不道徳な法律や制度に抵抗することの重要性に対する強い信念がありました。
ジョン・ロックの影響
ソローの思想は、17世紀のイギリスの哲学者ジョン・ロックの影響を強く受けています。ロックは、「統治二論」の中で、
政府の正当性は被治者の同意に基づくと主張し、市民が不当な政府に抵抗する権利を擁護しました。
ソローは、ロックの思想を継承し、個人の良心と道徳が、国家の法律や権力よりも上位に位置するという信念を表明しました。