## ソシュールの一般言語学講義の対称性
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言語記号の対称性
ソシュールは、言語記号をシニフィアンとシニフィエの結合として捉えます。シニフィアンとは、音韻イメージ、つまり言葉の音声的な側面を指し、シニフィエは概念、つまり言葉が表す意味内容を指します。ソシュールによれば、このシニフィアンとシニフィエは、紙の表裏のように切り離せない関係にあり、相互に依存し合っています。
重要なのは、シニフィアンとシニフィエの関係が恣意的であるということです。これは、特定の音韻イメージと特定の概念との間に、必然的な結びつきがないことを意味します。例えば、「木」という概念は、日本語では「ki」という音韻イメージと結びついていますが、英語では「tree」、フランス語では「arbre」と、異なる音韻イメージと結びついています。
この恣意性こそが、シニフィアンとシニフィエの対称性を保証するものです。シニフィアンとシニフィエは、互いに独立した要素でありながら、言語記号という一つの統一体を構成するために、不可分な関係にあると言えるでしょう。
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ランガージュ、ラング、パロールの対称性
ソシュールは、言語活動全体を包括する概念として「ランガージュ」、その中で社会的に共有された言語体系を「ラング」、個々の発話行為を「パロール」と定義しました。
ソシュールは、ラングとパロールを対称的な関係にあるものとして捉えています。ラングは、社会的に共有された言語体系であるため、個々の話者の外側に存在し、客観的な性質を持ちます。一方、パロールは個々の発話行為であるため、話者の内側に存在し、主観的な性質を持ちます。
しかし、ラングとパロールは相互に依存し合う関係にもあります。ラングは、パロールを通して具現化され、パロールはラングという枠組みの中で成り立ちます。ソシュールは、この両者の関係を、コインの表裏にたとえています。
このように、ラングとパロールは、客観性と主観性、社会性と個人性といった対称的な側面を持ちながらも、言語活動という一つの統一体を構成するために、不可分な関係にあると言えるでしょう。