## ソシュールの一般言語学講義の世界
言語学の対象
ソシュールは、言語学の対象を
**「言語」**と定めました。言語は、**記号の体系**であり、
**思考を表現するため**、そして**コミュニケーションをとるため**に用いられます。
言語とラング、パロール
ソシュールは、言語という現象を理解するために、
**「ラング」**と**「パロール」**という二つの側面から捉えることを提唱しました。
* **ラング**は、ある特定の言語を話す共同体全体によって共有されている、
**抽象的な言語体系**です。文法規則、語彙、音声体系など、
言語を構成する要素全体を包含します。
* **パロール**は、個々人が具体的な場面において実際に行う、
**具体的な言語活動**です。発話や筆記などを通して、
ラングを現実のコミュニケーションに用いる行為を指します。
記号の恣意性と線状性
ソシュールは、言語記号を**「シニフィアン」**と**「シニフィエ」**という
二つの要素から成り立つものとして捉えました。
* **シニフィアン**は、記号の**表現**を指します。例えば、「木」という単語の音声や文字イメージなどです。
* **シニフィエ**は、記号の**内容**、すなわち概念を指します。例えば、「木」という言葉から想起される、
植物としての木のイメージなどです。
ソシュールによれば、シニフィアンとシニフィエの関係は**恣意的**なものです。つまり、
**特定のシニフィアンとシニフィエの結びつきに必然性はなく、**
**社会的な約束事として成り立っている**と考えます。
また、言語記号は**線状性**を持つという特徴も指摘しました。これは、
**音声言語の場合、音が時間軸に沿って一つずつ発せられること、**
**文字言語の場合、文字が空間的に一列に並べられること**を意味します。
共時態と通時態
ソシュールは、言語を研究する際には、**二つの異なる視点**を持つことの重要性を説きました。
* **共時態**は、**ある特定の時点における言語の状態**を対象とする視点です。
* **通時態**は、**時間軸に沿って言語の変化を捉える**視点です。
ソシュールは、特に**共時態的**な分析を重視しました。これは、
**ある特定の時点における言語体系を、**
**その内部の要素間の関係性に着目しながら分析する**ことを意味します。
価値の体系としての言語
ソシュールは、言語を**「価値の体系」**として捉えました。言語記号は、
**他の記号との差異によって、その価値を獲得する**と考えたのです。
例えば、「木」という言葉は、「石」「花」「鳥」など、
**他の単語との対比によって、初めてその意味を持つ**ことになります。
このように、言語記号は単独では意味を持たず、
**言語体系全体の中で、他の記号との関係性によって、**
**その価値、すなわち意味を獲得する**とソシュールは考えました。