スミスの道徳感情論を読む前に
道徳哲学の基礎知識に触れておく
アダム・スミスの『道徳感情論』は、道徳哲学の古典として知られる重要な著作です。しかし、道徳哲学自体に馴染みがなければ、その内容を十分に理解することは難しいでしょう。そのため、事前に道徳哲学の基本的な考え方や歴史について触れておくことをお勧めします。
具体的には、道徳哲学とは何か、どのような問いを扱っているのか、主要な考え方や立場にはどのようなものがあるのかなどを理解しておくと良いでしょう。例えば、功利主義、義務論、徳倫理学といった主要な道徳理論について、それぞれの特徴や代表的な思想家を学ぶことは、スミスの議論を理解する上で大いに役立ちます。
当時の社会背景や思想的潮流を理解する
『道徳感情論』は18世紀、スコットランド啓蒙と呼ばれる時代背景の中で書かれました。当時の社会状況や思想的潮流を理解することは、スミスの主張をより深く理解するために重要です。
例えば、18世紀のイギリスは産業革命の初期段階にあり、社会構造や人々の価値観が大きく変化しつつありました。また、啓蒙主義の影響を受け、理性や経験に基づいた社会や道徳のあり方が模索されていました。このような時代背景を踏まえ、スミスがどのような問題意識を持ち、どのような社会を目指していたのかを考えることが重要です。
共感と利己心の関係について考えてみる
『道徳感情論』の中心的なテーマの一つは、「共感」という概念です。スミスは、人間には他者の感情を理解し、共に感じることができる「共感」の能力が備わっていると主張します。そして、この共感こそが道徳的な判断や行動の基盤となると考えました。
一方、スミスは人間には「利己心」も存在することを認めています。彼は、共感と利己心という一見相反する二つの要素が、人間の道徳的行動においてどのように作用するのかを探求しました。
『道徳感情論』を読む前に、自分自身の中にも共感と利己心が存在することを意識し、それぞれの要素が自分の行動にどのような影響を与えているのかを振り返ってみると、スミスの議論をより深く理解できるようになるでしょう。