スミスの道徳感情論の関連著作
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関連歴史的名著
* **デイヴィッド・ヒューム著『人性論』 (1739-40年)**
アダム・スミスに多大な影響を与えたとされる本書は、経験主義的アプローチを通じて人間の理性、道徳、政治を考察しています。ヒュームは、理性よりも感情が人間の行動や道徳判断において重要な役割を果たすと主張し、共感の概念を通じて道徳の起源を説明しようと試みました。これは、スミスが『道徳感情論』で展開する「共感」に基づく道徳理論の基礎となる重要な概念を提供しています。
* **ジャン=ジャック・ルソー著『人間不平等起源論』 (1755年)**
社会契約論で知られるルソーは、本書で文明の発展が人間の堕落をもたらしたと主張しました。彼は、自然状態における人間は自己愛と憐憫の情によってのみ動かされており、私的所有の発生と社会の不平等によって道徳が腐敗したと考えました。スミスはルソーの思想に批判的でしたが、人間の自然な同情心と社会秩序の関係について考察を深める上で影響を受けたと考えられます。
* **バーナード・マンデヴィル著『蜂寓話』 (1714年)**
「私的な悪徳、公共の利益」という逆説的な主張で知られる本書は、人間の利己心が社会全体の繁栄につながると論じました。スミスはマンデヴィルの思想を批判的に捉えていましたが、「見えざる手」の概念に見られるように、個人の利己的な行動が意図せずして社会全体の利益に貢献するという考え方に影響を与えた可能性があります。
* **フランシス・ハチソン著 『道徳哲学体系』 (1755年)**
スミスが師事したハチソンは、道徳感覚論を提唱し、人間には善悪を判断する先天的な道徳感覚があると主張しました。ハチソンは、人間の行動の動機を利己心だけでなく、他者の幸福を願う「仁愛」にも求めました。スミスはハチソンの道徳感覚論を批判的に継承し、共感の概念を中心に据えた独自の道徳理論を構築しました。