スミスの道徳感情論の対極
アダム・スミスの「道徳感情論」
:共感に基づく道徳体系
アダム・スミスの「道徳感情論」は、人間の道徳性が共感の能力に基づいていると主張する作品です。スミスは、人間は他者の喜びや苦しみを理解し、共有する能力を持っていると論じます。そして、この共感能力こそが、道徳的な行動を促す原動力となると考えました。
対極に位置する思想:功利主義
スミスの「道徳感情論」の対極に位置する思想として、功利主義が挙げられます。功利主義は、ジェレミー・ベンサムやジョン・スチュアート・ミルによって体系化された道徳哲学です。
功利主義の中心概念:「最大多数の最大幸福」
功利主義の中心概念は、「最大多数の最大幸福」です。これは、道徳的に正しい行為とは、最も多くの人に、最も大きな幸福をもたらす行為であると定義するものです。功利主義は、個人の感情や共感よりも、行為の結果としての幸福の総量を重視します。
功利主義と道徳感情論:対照的な視点
功利主義と「道徳感情論」は、道徳の根拠について対照的な視点を提供します。「道徳感情論」が共感や感情を重視するのに対し、功利主義は理性的な計算と結果に基づいた判断を重視します。
功利主義を代表する思想家:ベンサムとミル
ジェレミー・ベンサムは、快楽と苦痛を人間の行動の根本原理と捉え、道徳を数量的に測定できると考えました。一方、ジョン・スチュアート・ミルは、ベンサムの功利主義を批判的に継承し、質的に異なる幸福を区別することの重要性を強調しました。
対立点と共通点
功利主義と「道徳感情論」は、一見すると対立する思想に見えます。しかし、どちらも人間の幸福を究極的な目標としている点で共通しています。それぞれの思想は、道徳的な行動を促す異なるメカニズムを提示しており、現代社会においても重要な論点を提供しています。