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スミスの道徳感情論の力

## スミスの道徳感情論の力

1. 共感に基づく道徳理論

アダム・スミスの『道徳感情論』(1759年)は、道徳的判断の根底に共感の原理を置くことで、それまでの道徳哲学に大きな影響を与えました。

従来の道徳哲学、特に理性主義的な立場からは、道徳は理性によって普遍的な法則を認識することだと考えられていました。しかし、スミスは人間の道徳的行動を観察し、人々が理性だけでなく感情、特に他者の感情への共感によって強く動かされていることを明らかにしました。

スミスは、「共感」を、他者の立場に身を置き、その感情を追体験する能力と定義しました。私たちは、他者の喜びや苦しみを直接経験することはできませんが、彼らの状況を想像し、共感を通して、あたかも自分ごとように感じることができるとスミスは論じます。

2. 「公平な観察者」の概念

スミスは、共感に基づく道徳的判断は主観的なものでしかないという批判に対して、「公平な観察者」という概念を導入することで反論を試みました。

「公平な観察者」とは、特定の立場や感情に偏ることなく、客観的な視点から物事を判断する理想的な観察者のことです。スミスは、私たちが道徳的判断を下す際には、この「公平な観察者」の視点を取り入れることで、自身の感情的な偏りを修正し、より公正な判断を下せると考えました。

3. 社会秩序への影響

スミスの道徳感情論は、単なる個人の道徳的判断にとどまらず、社会秩序の維持にも重要な役割を果たすとされています。

スミスは、人間は本質的に利己的な存在であると同時に、他者との共感を強く求める存在でもあると捉えました。そして、この共感の能力こそが、利己的な個人が集まる社会において、秩序と協調を生み出すための重要な基盤となると考えたのです。

具体的には、私たちは他者から承認されたいという欲求を持っており、そのためには「公平な観察者」の視点から見て、道徳的に称賛されるような行動を取ろうとします。

これらの要素が、『道徳感情論』の持つ力の一部です。

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