スミスの国富論の関連著作
### 1.
経済学と政治経済学の形成
* **トマス・マン (Thomas Mun), 『イングランドから東インド会社とともに行われた貿易について』(1630年)**: 重商主義を擁護した初期の経済学書。 国の富は貴金属の保有量で決まるとし、貿易黒字と植民地獲得を重視する。スミスは自著の中でマンの主張を批判の対象としている。
* **ウィリアム・ Petty, 『政治算術』(1690年)**: 統計的手法を用いて経済現象を分析しようと試みた先駆的な著作。 国力を測る指標として人口や土地の重要性を説く。スミスは Petty の影響を受けたと考えられている。
* **ジョン・ロック (John Locke), 『統治二論』(1689年)**: 自然権に基づいた政府の役割を論じた政治哲学書。 所有権の概念を労働と結びつけ、自由主義経済思想の基礎を築いた。スミスはロックの思想から大きな影響を受けている。
* **リシャール・カンティヨン (Richard Cantillon), 『商業の本質について』(1755年)**: 価格決定における需要と供給の役割、起業家の重要性、市場メカニズムの分析など、現代経済学に通じる先見性に富んだ内容を含む。スミスはカンティヨンの著作を高く評価し、その影響を受けていることが指摘されている。
* **フランソワ・ケネー (François Quesnay), 『経済表』(1758年)**: 経済循環の概念を初めて示し、農業を重視する重農主義の立場から経済政策を論じた。 スミスはケネーや他の重農主義者と交流があり、その影響を受けている部分もある。
### 2.
古典派経済学の発展
* **デイヴィッド・ヒューム (David Hume), 『道徳・政治・文学論集』(1752年)**: 貨幣数量説を展開し、貿易における自由放任の利点を論じた。 スミスは親友であったヒュームから大きな知的影響を受けている。
* **トマス・ロバート・マルサス (Thomas Robert Malthus), 『人口論』(1798年)**: 人口増加が食糧生産を上回る傾向にあると主張し、貧困問題の根深さを指摘した。 スミスはマルサスの著作を高く評価し、自著の中で引用している。
* **ジャン=バティスト・セイ (Jean-Baptiste Say), 『経済学概論』(1803年)**: 供給はそれ自身の需要を生み出すという「セイの法則」を提唱し、自由競争と市場経済の有効性を主張した。 スミスと同様に自由主義経済思想を代表する経済学者の一人。
* **デヴィッド・リカード (David Ricardo), 『経済学および課税の原理』(1817年)**: 比較優位に基づく自由貿易の理論を展開し、地代論や分配論など、古典派経済学の体系化に貢献した。 スミスはリカードの先駆者とみなされている。
* **ジョン・スチュアート・ミル (John Stuart Mill), 『経済学原理』(1848年)**: 古典派経済学を体系的にまとめ上げ、功利主義の立場から政府の役割や社会改革について論じた。 スミス以降の経済学の発展を踏まえ、古典派経済学の集大成を試みた。
これらの著作は、スミスの『国富論』と密接に関連しており、経済学思想の発展を理解する上で重要な位置を占めている。