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スミスの国富論の構成

## スミスの国富論の構成

第1編 労働生産力の増進の原因について、およびその生産物が国民の各階級の間で自然と分配される秩序について

本書の冒頭となる第1編は、全5巻の中でも特に重要な部分であり、スミスの経済学の中核を成す概念が提示されています。

最初の11章では、**分業**が労働生産力を飛躍的に向上させることを、ピン製造工場の例を用いながら具体的に説明します。分業によって労働者は特定の作業に特化し、熟練度を高めることができるため、生産性が向上するとされています。

続く章では、**貨幣**の起源と使用、そしてそれが分業と市場の拡大を促進する役割について論じています。さらに、商品の**価格**は、需要と供給の関係だけでなく、労働、資本、土地といった生産要素のコストによっても影響を受けると説明します。

後半部分では、賃金、利潤、地代という**分配**に関する考察が展開されます。スミスは、労働市場における需要と供給の関係が賃金を決定するとし、資本の蓄積が賃金の上昇につながると主張します。また、利潤は競争によって低下する傾向にあり、地代は土地の生産性と立地の優位性によって決まると説明します。

第2編 資本の性質、蓄積、およびその異なる用途について

第2編では、経済成長の源泉となる**資本**に着目し、その性質、蓄積、そして社会における様々な用途について考察しています。

まず、資本を固定資本と流動資本に分類し、それぞれの特徴と役割を説明します。固定資本は機械設備や工場など長期的に使用される資本を指し、流動資本は原材料や賃金など短期的に回転する資本を指します。

次に、資本の蓄積は経済成長に不可欠であると強調し、貯蓄の重要性を説きます。人々が消費を控えて貯蓄を増やすことで、投資に回される資金が増加し、経済が発展すると主張します。

そして、資本は農業、製造業、商業といった様々な分野に投資され、それぞれが経済全体に貢献していると説明します。スミスは、国内産業を保護する重商主義政策を批判し、自由貿易こそが経済成長を促進すると主張します。

第3編 異なる国民における富の進歩の異なる状態について

第3編は、歴史的な視点から、異なる国や地域における経済発展の違いを分析しています。

古代から近代にかけてのヨーロッパ経済史を概観し、都市の興隆、商業の発展、地理的大発見などが経済成長に与えた影響について考察しています。

特に、重商主義政策が経済成長を阻害してきたと批判し、自由貿易の重要性を改めて強調しています。

第4編 経済体系について

第4編では、重商主義と農本主義という当時の主要な経済思想を批判し、スミス自身の経済思想である**自由主義経済**の原則を体系的に展開しています。

重商主義については、金銀の蓄積を重視する政策を批判し、真の富は国民の生活水準によって測られるべきだと主張します。

農本主義については、土地こそが富の唯一の源泉であるという考えを否定し、労働や資本の重要性を強調します。

その上で、スミスは政府の役割は限定的であるべきだと主張し、自由競争と自由貿易こそが経済発展の鍵となると結論付けています。

第5編 君主または国家の収入について

最終章となる第5編では、国家財政、租税、そして政府の役割について論じています。

まず、国防、司法、公共事業といった政府の役割と、そのための財源確保の必要性を説明します。そして、租税の原則として、公平性、明確性、納税の簡便さ、徴収の効率性を挙げ、様々な租税のメリットとデメリットを分析しています。

さらに、教育やインフラ整備など、政府が積極的に取り組むべき分野についても言及し、市場メカニズムだけでは解決できない問題に対して、政府が適切な役割を果たすことの重要性を説いています。

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