## スミスの国富論の原点
1.啓蒙主義の影響
アダム・スミスは18世紀スコットランド啓蒙主義の時代にエディンバラとグラスゴーで学び、当時の主要な思想家たちと交流しました。この時代の重要な特徴は、理性と経験に基づいた社会の進歩に対する楽観的な信念でした。スミスもまた、人間の理性と自由を重視し、伝統的な権威や国家による過度な介入を批判しました。
2.重商主義への批判
当時のヨーロッパでは、国家が経済活動を積極的に統制し、富の蓄積を目指す重商主義が主流でした。スミスは、重商主義的な政策、特に貿易制限や独占を批判し、自由な貿易と競争こそが国全体の富を増やすと主張しました。
3.「道徳感情論」における共感と利己心
スミスは「国富論」以前の1759年に「道徳感情論」を出版し、人間の道徳性と社会秩序の起源について考察しました。彼は、人間には他者の感情を理解し共感する能力があると同時に、自身の利益を追求する利己心も持ち合わせていると論じました。スミスは、「国富論」においても、個人の利己的な経済活動が、結果として社会全体の利益につながると考えました。
4.フランス経済学者との交流
スミスはフランス滞在中に、フランソワ・ケネーやヴァンサン・ド・グルネーといった重農主義経済学者と交流しました。重農主義は、農業を富の源泉とみなし、自由放任主義的な経済政策を主張しました。スミスは重農主義の考え方から影響を受けつつも、彼らのように農業のみを重視することはせず、労働の分業と生産性向上に焦点を当てました。