## スミスの国富論の分析
1. 出版と背景
アダム・スミスの『国富論』は正式タイトルを『諸国民の富の性質および原因についての考察』(An Inquiry into the Nature and Causes of the Wealth of Nations) といい、1776年に出版されました。これは経済学の古典として広く知られており、近代経済学の基礎を築いた画期的な著作とされています。
2. 内容
本書は全5編からなり、富の源泉、富の蓄積、経済発展、経済学説史、財政学など幅広いテーマを扱っています。
3. 分業論
スミスは本書の冒頭でピン工場の例を挙げ、分業が生産性を飛躍的に向上させることを示しました。彼は分業によって①労働の熟練、②作業時間の節約、③機械の発明が促進されると論じています。
4. 「見えざる手」
スミスは、個人が自身の利益を追求することで、結果として社会全体の利益にもつながると考えました。彼はこれを「見えざる手」と表現し、自由競争を重視する市場経済の考え方を示しました。
5. 価値論
スミスは価値には「使用価値」と「交換価値」の二つがあるとしました。そして、交換価値は労働によって決定されるとする「労働価値説」を展開しました。
6. 国家の役割
スミスは重商主義を批判し、自由貿易の重要性を説きました。一方で、国家は国防、司法、公共事業など市場メカニズムでは十分に供給されない公共財を提供する役割を担うと主張しました。
7. 影響
『国富論』は出版当時から大きな反響を呼び、イギリスをはじめとするヨーロッパ諸国の経済政策に多大な影響を与えました。現代においても、市場経済の原則を説いた古典として読み継がれています。